血行不良の原因を逆上って考える
痛みが大きくなったり、ぶり返したりすることがあります。
初診でお話をうかがうと、日によって痛み方には波がある、という例が多くあります。もしくは、治療して痛みが楽になった後で、またぶり返してくることもあります。
これはなぜ起きるのか考えてみます。
その痛みがケガ(損傷)であれば、痛めてからじわじわ悪化してピークを迎え、やがて治っていくという流れになります。途中で無理をしなければ、治っていく過程で悪化することはそんなにないでしょう。
しかし腰痛や坐骨神経痛などの多くの痛みはケガではありません。筋肉の血行不良ですので、単純に時間経過で治るとは限りません。
血行不良そのものは、例えばマッサージや鍼灸を使わなくても、ただ温めるだけでも改善することがあります。お風呂に入っているときは痛みが楽、という患者さんはけっこういらっしゃいます。でも、一時的に楽になっても、また痛みだす。
ここでは、二つの問題を考えなくてはなりません。自律神経の問題と、脳の問題です。
交感神経が緊張して血行不良が起きる
自律神経は交感神経と副交感神経があります。このバランスが乱れると、様々な問題が起こります。例えば、血管を支配している交感神経が緊張すると、血管が細くなり、血流の悪いところが出てきてしまいます。血行が悪いと、酸素が足りなくなって、痛みが起こります。
腰の筋肉で血行不良が起これば腰痛、足で起これば坐骨神経痛です。また、交感神経は筋肉の緊張を高めますので、血行不良と合わさって筋肉が引きつってしまうこともあります。ギックリ腰はその典型例です。
交感神経が過緊張を起こしていると、リラックスしているつもりでもリラックスできていない、という場合があります。例えば、布団に入ってもよく眠れなかったり、寝ても目が覚めてしまうような場合、交感神経の過緊張が疑われます。
交感神経は少しのストレスにも反応する
交感神経は、思いのほか簡単に緊張してしまいます。仕事に行く日の朝は意識しなくても交感神経のスイッチが入っていますし、不安なニュースを見ただけでも緊張は高まります。スマホなどの画面を見ているだけでも緊張は起こります。
自律神経の状態によって痛みの強さが変わることはよくあります。そういうものなんだと、おおらかに構えておくことがコツです。少し痛みが強くなったからといって、そのたびに不安になってしまうと、ますます交感神経の緊張は高まります。
痛くなったとしても、これはよくあることなんだと、気持ちを落ち着けることです。また、ご自身でできるリラックス法を試してみることです。
ストレスは痛みの感受性を上げる
他の記事でも書いていますが、脳は痛みをただ感じるだけではありません。脳は痛みの強さをコントロールする働きも持っています。ところが、痛みのことを気にしすぎていたり、ストレスで頭がいっぱいになっていると、脳の痛みコントロールが乱れてしまい、痛みが大きくなってしまうことが分かっています。
例えば、仕事がうまくいっていなかったり、人間関係でギクシャクしていたり、身の回りの小さなストレスでも蓄積すると脳には影響があります。また、体が痛いということ、それ自体がストレスでもあります。
ではどうするか
ストレスをいきなりゼロにして、ハッピーになってくださいとはいいません。ただ、ストレスによって痛みが強くなることがある。気持ちの持ちようで痛みの強さが変わることがある、ということを知っておいてください。痛みが強くなったら、そのことを思い出してください。
そして、もしできるなら。痛いことに注目するのではなく、自分ができていること、達成していることに意識を向けてください。痛いけれど、働いている。痛いけれど、家事は片付けた。痛いけれど、予定をキャンセルせずに出かけた。そんな風に考える練習をしてみてください。
考え方の習慣を変えることで痛みに立ち向かえる。この事実は、近年の痛み研究がたどり着いた大きな成果でもあります。現代医学では、認知行動療法として注目されています。
参考になりましたら幸いです。
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