腰痛の再発は防げるのか?

腰痛は、一つの原因で起こることは少なく、多くの場合、複数のリスク要因が重なって起こると考えられています。腰痛発症のリスク要因には色々ありますが、中でも気になるのが「過去の腰痛」です[1]。
過去に腰痛になったことがある人は、腰痛を発症しやすいといわれています。今回は、そんな腰痛の再発について整理していきます。
腰痛の再発はありふれている
まず、腰痛の再発率です。どのくらいの割合で再発するのでしょうか。調べてみたところ、文献によってかなり数値にバラつきがあります。腰痛の再発は、定義が定まっていないこともあって、1年以内の再発率にはかなり幅があります[2]。33%とする報告もあれば、73%とする報告もあります[3][4]。
そんな中、注目してみたいのは、理学療法のトップジャーナルに掲載された2019年の論文です。腰痛から回復した患者250名を対象として、毎月調査をして経過を追っています。その結果、12か月以内に腰痛の再発を経験した人は69%、活動制限を伴う腰痛再発は40%、医療機関を受診するほどの腰痛再発は41%となりました[5]。
腰痛の再発がありふれている、というのは間違いないでしょう。
再発の原因はまだはっきりしない
でも、どうして再発してしまうのでしょう?これが難しいところです。
腰痛の再発と関連する要因はいくつか見つかっているのですが、因果関係にまで踏み込んで話ができるほどの証拠は見つかっていないんですね。
例えば、先ほど紹介した2019年の研究では、長時間座っていることは腰痛の再発と関連していましたが[5]、そこに対策をして再発を減らせるとまでは言えない、という具合です。そこから先はもっと研究が必要になります。
一応、再発の原因として考えられる方向性は2つあります。一つは、腰痛が起こりやい(リスク要因の多い)生活を続けている人が繰り返す、という考え方。もう一つは、腰痛になった影響が体のどこかに残るのではないか、という考え方です。
ただ、どちらにしても研究が追いついていないようで、エビデンスに基づいて話をするのは難しそうです。いわゆる正しい姿勢についても、腰痛の再発を防ぐという様な研究結果は見つかりませんでした。
というわけで、ちょっと面倒な話になってしまいましたが、再発そのものは多いけれど、その原因についてはまだはっきりしない。これが現時点での結論になります。
腰痛再発を防ぐウォーキング
では、腰痛の再発を防ぐことって可能なんでしょうか?
方法はあります。運動、とりわけウォーキングの話になります。
まずは運動です。コクランという医療の効果を検証している組織の研究結果を見てみると、運動は腰痛の再発予防によさそうです。治療後(治った後)に運動を行うことで、腰痛の再発を減らせる可能性が示されています[6]。
さて、日常で取り入れやすい運動というと、何といってもウォーキングでしょう。その手軽さは魅力ですし、慢性腰痛の治療としても行われますから、まず候補に上がります。
そこで、ウォーキングで腰痛の再発を減らすことができるか調べた研究を探してみました。
2024年、Lancetに掲載された研究です[7]。参加者は一般的な腰痛(非特異的腰痛)から回復した成人です。
開始から6ヶ月以内に、1日30分以上、週5回歩くところまで持っていくのを目標にしつつ、参加者それぞれに合わせて初期の運動量を決める。歩数計とウォーキング日記を渡して記録してもらう。疼痛科学に基づいた、腰痛への恐怖を減らすための教育を行い、自己管理の方法も伝え、理学療法士によるフォローアップも行う。少なくとも12ヶ月~最大で36ヶ月まで追跡調査。
その結果、腰痛の再発および腰痛の受診再発のリスクも減少したことが確認されました。
このプログラムをそのまま再現すべきかはさておいて、ウォーキングを中心としたプログラムによって、再発を減らせる可能性が示されたのは大きいでしょう。今後、さらに研究が進むことを期待したいです。
今回は腰痛の再発をテーマにしましたが、実のところ、ウォーキングの良さはそれだけではありません。
慢性痛の運動療法としても行われていますし[8]、血圧を下げる[9]、体重・体脂肪率の改善に役立つ[10]、2型糖尿病で血糖コントロールが改善する可能性[11]、不安・抑うつ症状が減る[12]、1日7000歩以上歩くことと、全死因死亡率のリスク低下との関連が報告されている等[13]、いい話がたくさんあります。
腰痛の話を抜きにしても健康にいいですから、ウォーキングはお勧めです。
再発が心配なら、忘れてしまうのも手です
いや、そうはいっても歩く時間ないよ、しんどいよ、という方もいらっしゃるでしょうか。
そういう場合は、ちょっと極論気味ですが、腰痛のことは忘れましょう。
今は腰痛が治まっていても、将来の再発が気になってしまうことはあると思います。これまでに辛い思いをした人ほどそうかもしれません。
しかし、まだ起きていない腰痛を過度に心配して、活動を控えたり、生活を狭めたりする必要もありません。
腰痛には、身体的な要因だけでなく、不安や抑うつ、腰痛に対する否定的な考え方など、さまざまな要因が関係すると考えられています[1]。痛みに注目しない、多くの腰痛は怖くない、体を動かそう。これは当ブログで繰り返し書いてきたメッセージでもあります。
腰痛のことなんて忘れて、普通に楽しく生活していただければ、それでいいのではないでしょうか。
以上、参考になりましたら幸いです。
参考
[^2] Definitions of recurrence of an episode of low back pain: a systematic review
[^3] Risk of Recurrence of Low Back Pain: A Systematic Review
[^4] Acute low back pain: systematic review of its prognosis
[^5] Recurrence of low back pain is common: a prospective inception cohort study
[^6] Exercises for prevention of recurrences of low-back pain
[^7] Effectiveness and cost-effectiveness of an individualised, progressive walking and education intervention for the prevention of low back pain recurrence in Australia (WalkBack): a randomised controlled trial
[^8] Walking exercise for chronic musculoskeletal pain: systematic review and meta-analysis
[^9] Walking and resting blood pressure in adults: a meta-analysis
[^10] The effect of walking on fitness, fatness and resting blood pressure: a meta-analysis of randomised, controlled trials
[^11] Impact of walking on glycemic control and other cardiovascular risk factors in type 2 diabetes: a meta-analysis
[^12] The Effect of Walking on Depressive and Anxiety Symptoms: Systematic Review and Meta-Analysis
[^13] Daily steps and health outcomes in adults: a systematic review and dose-response meta-analysis


