腰部脊柱管狭窄症は手術しかない?

腰部脊柱菅狭窄症とは

脊柱菅狭窄症とは
腰部脊柱菅狭窄症とは、腰の神経の通り道(脊柱管)が狭くなる疾患です。65歳以上の患者において、脊椎手術が行われる主な原因となっています。

とてもよく知られた疾患ではありますが、まだまだ不明なことも多く、その定義についても合意されたものはありません[1]

診断基準についても確立されたものはなく、日本の診療ガイドライン2021では、以下を案として記載しています[1][2]

①臀部から下肢の疼痛やしびれを有する
②臀部から下肢の症状は,立位や歩行の持続によって出現あるいは増悪し,前屈や座位保持で軽減する
③腰痛の有無は問わない
④臨床所見を説明できるMRIなどの画像で変性狭窄所見が存在する

腰部脊柱管狭窄症では、間欠性跛行(かんけつせいはこう)が特徴的です。歩いていると痛くなり、休むと楽になります。もし、歩いても悪化しない場合は、腰部脊柱管狭窄症ではない可能性が高いとされています[1]

症状のメカニズム

腰部脊柱管狭窄症は、名前こそ狭窄症ですが、狭窄それ自体が症状の主な原因ではありません。画像所見としての脊柱管狭窄が必ずしも痛みとイコールではないからです。

脊柱管が狭くなること自体は、珍しいことではありません。年齢を重ねるにつれて、脊柱管の狭窄も増えていきます。

1009人(平均66.3歳)を対象に行われた研究では、第1腰椎~第1仙椎までの高さでは、中等度以上の狭窄は77.9%、重度の狭窄は30.4%の割合で見られました。第4・第5腰椎間では、高齢者の1/4に重度の圧迫が見られました。

ところが、中等度以上の狭窄がある人のうち、痛みなどの症状があるのは12.9%だけで、重度の狭窄がある人に絞っても症状があるのは17.5%でした。大多数の方は狭窄があっても痛くありません[3]

また、狭窄の程度と症状には関連性がないことも分かっています[4]。狭窄が極めて重度の場合は話が変わりますが、そうでなければ必ずしも典型的な症状が出るとは限りません[5]

そのため、「脊柱管の狭窄=痛み」という、シンプルな説明はされなくなりました。

虚血・うっ血が有力視されている

現在のところ、腰部脊柱管狭窄症のメカニズムとしては、神経の虚血(血流障害)または静脈血うっ滞が有力視されています。これであれば、狭窄症の間欠性跛行を説明できる可能性があります[2]

管理(保存療法)

腰部脊柱管狭窄症を治療する(直接的に改善を狙う)には手術という話になります。しかし、手術すれば全て解決という話でもありません。そこで、まずは管理が大切になります。
ここでいう管理とは、症状が悪化しないようにコントロールしつつ、以前より動けるようにQOL(生活の質)の改善をはかることです。

症状が重度の場合は手術に踏み切る割合が高くなりますが、そうでなければ手術なしで対処できることも多いようです。例えば、症状が中等度の患者を追跡調査したところ、約3年の間に手術に至ったものは7%だったという報告があります[6]

保存療法としては、鎮痛薬や運動療法がガイドラインで推奨されています[1]

鍼治療も腰部脊柱菅狭窄症に対して臨床試験が行われています。鍼治療・薬物療法・運動療法の3群で比較した結果、鍼治療は、身体機能スコアで運動療法よりも有意に効果的、満足度スコアで薬物療法よりも有意に効果的でした[7]

手術か、保存療法か

手術すべきか、保存療法でいくべきか。この判断は非常に難しいようです。

腰部脊柱管狭窄症に対して、手術療法と保存的治療のどちらが優れているかを結論づけるには、根拠が極めて乏しく、臨床実践の指針となる新たな推奨事項を示すことはできない。ただし、手術群では副作用の発生率が10%から24%の範囲であったのに対し、保存的治療では副作用の報告が一切なかった点には留意すべきである。

コクラン・レビューより[8]

手術と保存療法を比較した有名な試験で、4年間は手術の方がよかったが、8年間で見ると手術の効果が減少したという論文もあります[9]

手術の効果は保存療法と比較して、「控えめながらも着実な改善」という報告もあります[10]

最終的に、手術を選ぶのか保存療法でいくのかは、画像の重症度だけで決まるものではありません。出ている症状が、患者さんの許容範囲かどうかで大きく変わってくる部分です。ここはケースバイケースですので、担当の医師とよく相談することが大切です。

参考

[^1] 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)

[^2] Lumbar Spinal Stenosis-StatPearls

[^3] 腰部脊柱管狭窄症の疫学 [特集:腰部脊柱管狭窄症の鑑別と保存的治療] 日本医事新報社

[^4] Is there a Correlation Between Degree of Radiologic Lumbar Spinal Stenosis and its Clinical

[^5] The association between clinical symptoms of lumbar spinal stenosis and MRI axial imaging findings

[^6] Central lumbar spinal stenosis: natural history of non-surgical patients

[^7] A comparative study of three conservative treatments in patients with lumbar spinal stenosis: lumbar spinal stenosis with acupuncture and physical therapy study (LAP study)

[^8] Surgical versus non-surgical treatment for lumbar spinal stenosis

[^9] Long-term outcomes of lumbar spinal stenosis: eight-year results of the Spine Patient Outcomes Research Trial (SPORT)

[^10] Long-term results of surgery for lumbar spinal stenosis: a randomised controlled trial

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著者:浦﨑 靖博(うらさき やすひろ)
鍼灸師。2007年に向日市で開業して以来、鍼灸一筋。当サイトは全て、浦﨑の自作自筆。ブログでは、主に現代医学の情報を解説している。X(Twitter)アカウント