椎間板とは

椎間板
髄核と線維輪
背骨を構成する椎骨と椎骨の間にあるクッション、それが椎間板です。
椎間板の構造はアンパンをイメージしていただくと分かりやすいですが、外側に頑丈な線維輪があって、内側にはゲル状の髄核があります。

椎間板に異常が起こると、腰痛を引き起こすと従来から考えられてきました。その一つが椎間板変性です。

椎間板変性は腰痛とは無関係

椎間板の水分が失われて、柔軟性がなくなった状態を椎間板変性といいます。椎間板変性は加齢にともなって起こる自然現象です。

椎間板変性は腰痛のはじまりであるとか、良くないものとして扱われることがあります。しかし、現在ではこれが即腰痛の原因になるわけではないことが分かっています。

椎間板変性は痛みのない人にも多い

例えば、腰痛のない健康な人にも85%という高い確率で椎間板変性は見つかるという報告があります。自然現象ですから、健康な人の多くに椎間板変性があります。このため、椎間板変性の有無だけでは腰痛があるかどうか見分けることは不可能です。
1995 Volvo Award in clinical sciences. The diagnostic accuracy of magnetic resonance imaging, work perception, and psychosocial factors in identifying symptomatic disc herniations.

椎間板変性とは無関係に腰痛は起こる

MRIで調べたところ、腰痛患者の47%は腰に異常が見つからなかったという報告もあります。この論文では、12ヶ月の調査期間中に腰痛を発症した患者は、MRI所見に何も変化がなかったことも合わせて報告しています。腰に異常があるから腰痛になるとは限りません。
The relationship between the magnetic resonance imaging appearance of the lumbar spine and low back pain, age and occupation in males.

こうした研究を見ていくと、しばしば語られるような「椎間板変性は腰痛の初期段階である」とは言えない可能性が高まります。腰痛はさまざまな要因が組み合わさって起こります。原因が一つだけという単純な話ではないことは知っておいて損はありません。

腰への負荷が悪ではない

一般に、腰に負荷をかけるのは良くないと思われがちですが、それに反して、ある種の負荷(体重・持ち上げ力・作業強度)は椎間板変性を遅くするという報告があります。また、一卵性双生児での研究では、体重が重たい方が腰椎の骨密度が高く、椎間板の状態も良かったとしています。負荷をかけた方が腰は丈夫に発達するわけです。
The effects of anthropometrics, lifting strength, and physical activities in disc degeneration.
Challenging the cumulative injury model: positive effects of greater body mass on disc degeneration.

腰へ負荷をかけることは、これまで思われていたほど悪いものではないばかりか、腰に良いことが分かってきています。何より、運動はその種類が何であれ、腰痛を予防することが分かっています。運動とは、腰への負荷そのものです。

腰痛でネット検索すると、しばしば腰に負荷をかけてはいけないという情報が出てきます。しかし、腰への負荷を減らすことばかり考えていたら、最後は寝たきりになるしかなくなります。それこそ健康から遠ざかってしまいますので、怖がらず安心して体を動かしてください。

参考⇒腰痛の原因と治し方(まとめ)