肩が痛い女性

どこまでも主観的で個人的な「痛み」

痛みって、言葉としてはあるんですが、目に見える形として、モノとしてあるわけではありません。客観的に見ることができないものなんですね。

最近は、電気ショック的なもので痛みを与えることで、あなたの感じている痛みはこのくらいですか?と痛みの強さを電気の強さで表すような機器も出てきてはいるようです。しかし、それにしても痛みを訴えるご本人の主観がベースであることに変わりはありません。痛みというのは、どこまでも主観的なもので、個人的な体験です。

私たち医療に関わる者が、痛みをどう計測するのかというと、患者さんに聞くしかありません。患者さんが痛いといえば痛いのだなと判断しますし、痛くないといえば痛くないのだなと判断する。そういうものです。

痛みを数値化するNRS

NRS(Numerical Rating Scale)という指標があります。あなたが今感じている痛みは0~10でいうと、どのくらいですか?という指標です。今日の痛みは5だなーとか、いや7くらいだなーとか。最悪を10として教えてもらいます。そこから、では今日の治療はこうしようとか、改善しているからこのまま続けようとか判断していきます。

医学的には、治療したことでNRSが2低くなれば、「有意に改善した」と判断することができます。つまり、治療が効いたということです。

とはいえ、これは治療する側の論理でして、患者さん側にしてみると印象はかなり違ってくるでしょう。

もともと2の痛みだったのが0になれば、効いたと思ってもらえると思います。しかし、10の痛みが8になったところで、いやこんなのじゃ気休めだよと思われてしまうかもしれません。たとえ有意な改善があっても、痛みが残っていると「ぜんぜん治療が効いてない!」と言われてしまうことも実際あります。

そういうときは、反論とか議論とかは意味がないので、「なるほど、まだ痛いんですね」というくらいで、さらなる手を考えることに注力します。結果的に時間がかかっても、痛みを小さくすることができればその治療には意味があります。

少しでも変化を

そのためには、治療を続けていただく必要があります。通院が途切れてしまうと、改善が止まってしまうか、最悪元に戻ってしまうこともあります。それこそもったいない話ですから、それまでにかけていただいた時間や費用がムダにならないよう、少しでも効果を感じてもらえるよう、手を尽くすことになります。

中には1回で治る例というのもあります。先週、五十肩かもしれないと40代の女性がお見えになりました。特に何をしたわけでもないのに肩が痛み出し、腕を上げたり服に袖を通すのがつらいということでした。治療したところ、その場で痛みはなくなり、つまりNRSはゼロになり、腕を挙げるのも服に袖を通すのも問題はなくなりました。

そういうこともあります。
そうではないこともあります。

いずれにせよ、痛みの治療は患者さんの声を聞くことなしにはできないものです。