緊張が緩むと症状が出るのは珍しくない

突然腰に激しい痛みが起きるギックリ腰ですが、発症した方はしばしばこう言います。

「油断していた。」

つまり、油断していなければ痛みを防げたかもしれない。そのように感じていらっしゃるのでしょう。

油断という言葉ですが、少し言い方を変えてみると、「緊張が緩んだとき」ということもできるかと思います。そう考えると、これは実際によく見られる現象です。

例えば、激務が続いていた人がまとまった休みをもらうと、体は楽になったはずなのに何気ない動作でギックリ腰を起こしてしまうことがあります。休日のギックリ腰って意外と多いのです。

いえ、ギックリ腰に限らず、同じような状況で五十肩を発症した患者さんもいましたし、痛みではなくめまいを起こす方もいます。緊張が緩んだときに何か症状が出てしまうのは珍しいことではありません。

緊張している間は症状も抑えられる

油断したときにギックリ腰になるのは、普段からストレスがかかりっぱなしになっている状況が先にあって、その緊張が緩んだタイミングで痛みが起こるから。こう考えれば、ギックリ腰のきっかけが重い荷物を持ち上げることだけでなく、クシャミや何気ない動作で起こることも説明ができます。油断や動作そのものが悪いのではなく、過緊張からの解放がポイントです。

例えば、人前のスピーチのあと、壇上から降りた後に吐き気を経験したことのある人は多いかもしれません。強い緊張感、ストレスにさらされていると、その時は平気でも、ストレスから解放されたとたんに症状が現れることがあります。

心身がストレスにさらされているとき、体はストレスの影響を受けますが、同時にその影響が表に出ないよう押さえ込む働きもあるようです。しかし、ひとたびストレスから解放されると、それまで押さえつけられていた症状が表面化してしまいます。

交感神経の過緊張は後に響く

精神的に緊張しているとき、つまりストレスを受けているとき、私たちの体は交感神経が活発に働きます。すると、筋肉には力がしっかり入りますし、意識も集中できます。活動的でストレスに抗える状態をつくります。

しかし、緊張が長く続くと問題が出てきます。交感神経の過緊張が続くと、酸素を体に取り込む量が減ってきます。呼吸が浅くなるからです。血管は細くなって、血流に滞りがでます。すると、筋肉に酸素が足りなくなってしまい、痛みや引きつりが起こりやすくなります。

それでも、交感神経が緊張している最中は、症状は最小限に抑えられます。無理をしても活動を維持する方にエネルギーが注がれます。ところが、ストレスや興奮がおさまると、症状を抑えていたフタが外れ、とたんに症状が表面化します。

これが、油断したときに痛みが出るメカニズムと考えていいでしょう。そして、私たちが「油断しない」のはおそらく不可能です。

仕事中ならなんとか緊張感を保てたとしても、家に帰って体を休めないわけにはいかず、どうしたって緊張を解く瞬間はやってくるからです。休日にギックリ腰を起こさないよう、休日でも仕事中と同じように緊張感を保てというのは無茶というものです。

問題は油断ではなく、過緊張が続いていることではないですか?

そもそも、日常的にストレスや緊張感に晒されすぎている方が問題です。油断したのが悪いのではなく、油断できない生活を余儀なくされている、そこに無理があると考えた方がいいのではないでしょうか。

「ギックリ腰になった!油断してた!」という方。普段から頑張りすぎ、無理しすぎになっていませんか?もしそうなら、ちょっとペース配分を見直してみるのもいいのではないでしょうか。